Silver Trail -dialog() spinoff-

Ayumu Nagamatsu / Chih-Yu Chenの展覧会"Silver Trail -dialog() spinoff-"を開催いたします。
Statement
2024年にアジアの主要都市を巡回したジェネラティブアート展「dialog()」は、東京・台北・ソウル・北京の4都市から集まった総勢40組のアーティストがアルゴリズムがもたらす表現の可能性を探求し、言語や文化の違いを超えて多元的対話と新たな創造的視野を拓く場を作り出しました。この度、その精神を受け継ぐdialog()のスピンオフ展「Silver Trail」を開催します。
本展示では築かれた対話をさらに深化させるため、日本と台湾から各1名のアーティストが共同制作に取り組みました。参加したのは台湾のジェネラティブアーティスト陳芷渝(Chih-Yu Chen、通称CYC)と、日本のジェネラティブアーティスト永松歩です。CYCはアルゴリズムによって現実のシミュレーションと詩的な表現との狭間に横たわる流動的な関係性を探究し、ジェネラティブアートからインタラクティブデザインまで幅広い作品を展開してきました。永松はプログラミングを用いた生成的表現の実践とその理論的考察の両面から活動してきた作家で、アルゴリズムの美学やデータと創造性の関係に深い関心を寄せています。異なる背景を持つ二人が対話を重ね、互いの創造性を刺激し合うプロセスが、本展示の核となっています。
コラボレーションのプロセスには、GitHubの仕組みが採用されています。二人はコメントやコミットメッセージを活用し、コード記述を超えたコミュニケーションを行いました。双方が書いたコードを自由に修正または削除可能とする「完全な自由」のルールのもと、1日1回のコミットを自らに課して、どれほど小さな変更でも価値があるとして、日々の進展を絶やさないことを目指しました。コードが更新されてゆく過程と並行して蓄積された言葉によるコミュニケーションは、GitHub上で作品が完成形に至るまでの創造的な軌跡として可視化されています。オンライン上で日々対話を交わしながら、一行一行のコードとアイデアを積み重ね作品を形作っていくこの試みは、ジェネラティブアート制作を通じた新たな「対話」の形を提示するものと言えます。
さらに、本プロジェクトは台湾のクリエイティブコレクティブVolume DAOと、日本のデジタルアートギャラリーNEORT++という二つのプラットフォームが培ってきた協働関係を一歩推し進めるものでもあります。dialog()というアジアを起点としたネットワークから生まれた本展は、地理的・文化的距離を超えたデジタルアートを共創する新たなモデルケースを提示します。もし、アジアのコード文化を共に作り上げるとしたら、それはどのようなものになるでしょうか。この展示は、そのような問いに対する一つの応答であると同時に、さらなる対話の道へと続く出発点でもあります。月の光に照らされた道をイメージした本展のタイトル「Silver Trail」が示すように、国境を超えたアーティストたちの、穏やかで、しかし確かな対話と創作活動が継続されることを願っています。
dialog()について
「dialog()」は、東京、台北、ソウル、北京の4都市を結ぶジェネラティブアートの展覧会です。各都市より総勢40名のアーティストによる作品が一堂に会し、アルゴリズムがもたらす表現の可能性を探求します。言語や文化の違いを超えた多元的な対話を通じて、新たな創造的視野を拓く場となることを目指しています。
VOL DAOについて
VolDAOは2021年末に設立された、台湾初のクリエイター、キュレーター、コレクターで構成されるアートNFTグループです。キュレーション、展示、様々なプロジェクトを通じて、Web2とWeb3、分散型ネットワークとアート、そして仮想世界と現実世界を橋渡ししています。
「Vol」は「Volume」の略称です。「ボリューム」や、ソーシャルメディアの文脈での「話題性」という拡張的な意味の他に、「巻」「冊」「部」のような収集の単位でもあります。私たちは投資に値し、将来のアート史を作ることができる作品を収集しています。同時に、イベントをキュレーションし、メタバースのためのより良いパブリックスフィアの構築に努めています。収集に値するアートワークを追求し、行動するコレクターになりましょう。
Artists
Ayumu Nagamatsu
ジェネレーティブアート、データドリブンアート、ビジュアルミュージックなどのスタイルや方法論、歴史の交差領域への関心から作品を制作。フリーランスのプログラマー・アーティストとしてリアルタイム・非リアルタイムの作品制作にたずさわり、複数のデジタルソフトウェアに精通する。また、美術系大学非常勤講師としてワークショップも積極的に開催。
Chih-Yu Chen
チー・ユー・チェンは台湾を拠点とするデジタルアーティストである。彼女は計算アルゴリズムと確率的変数を駆使し、人間の生活体験をデジタル空間内で再構築することを試みている。その創作活動はジェネラティブアートからインタラクティブデザインまで多岐にわたり、テクノロジーと人間性の接点を探求している。現在は特に、現実世界のシミュレーションと詩的な表現言語との間に生まれる動的な関係性に焦点を当て、アルゴリズムによる偶然性が如何にして人間の感情や記憶を呼び起こすかを研究している。