スクリーンの肉

この度、NEORT++は大原崇嘉の個展「スクリーンの肉」を開催いたします。
ステートメント
近年、映像メディアは解像度やフレームレートの向上によって、その媒介としての透明性を高めてきた。他方、ポータブル・デバイスの普及や触覚的インターフェースの常態化は、スクリーンの表面を前景化し、映像を触れうる可能性を帯びた界面として経験させている。
この二つの傾向は、美術史家 アロイス・リーグル が区別した「光学的(optisch)」と「触覚的(haptisch)」という視覚のモードに通じる。前者が距離を保ち奥行きのなかに対象を捉えようとするのに対し、後者は距離を圧縮し、表面へと近接する。しかし今日のメディア環境では、両者は排他的に切り替わるのではなく、むしろ遠近法的な深さと界面的な浅さは、同一の経験のうちで同時に強調され、重なり合っているように感じる。
この状況のもとで、映像は主客の枠組みを越え、身体の位置や運動を含み込む出来事へと変わりつつある。この変容を考えるうえで、モーリス・メルロ=ポンティ の現象学は示唆的である。身体は世界を受け取る装置ではなく、関係のなかで意味を生成する「生きられた身体(le corps propre)」である。
本展では、モーター制御によってディスプレイそのものを運動させる。鑑賞者はそれを目で追い、周囲を移動し、距離や角度を変えながら関わる。深さと浅さが交錯する場において、映像は身体と空間のあいだに生じる関係として立ち現れ、見ることの輪郭をゆるやかに揺り動かす。
助成:公益財団法人 花王 芸術・科学財団
Artist

大原崇嘉 | Takayoshi Ohara
1986年神奈川県生まれ。東京を拠点に活動するアーティスト、プログラマー。主に映像や照明などを用いたインスタレーションを制作。色彩の相互作用や奥行き認知に関する研究などを横断的に取り入れながら、イメージ/モノ、平面/奥行き、視覚/身体のあいだに立ち上がる両義性そのものを前景化する。近代以降に形成されてきた視覚の枠組みに現代的な技術から応答し、今日のメディア環境における視覚の在り方を問い直している。アーティストコレクティブ「ヨフ」のメンバーとしても活動。第67回カンヌ国際映画祭〈短編コンペティション部門〉ノミネート、第24回文化庁メディア芸術祭〈アート部門〉審査委員会推薦作品など。
Events
- upcoming2026.3.13 09:00 _ 2026.3.13 12:00
"スクリーンの肉" オープニングレセプション
「スクリーンの肉」のオープニングレセプションを開催します。 予約不要でどなたでもお越しいただけます。 東京都中央区日本橋馬喰町2-2-14 maruka 3FOn Site