Any% Multideveloper — Reality in Polyphony

この度、NEORT++はゲームをテーマにしたグループ展「Any% Multideveloper — Reality in Polyphony」を開催いたします。
ステートメント
"この恍惚とした動作を喜びと 誤解してしまうかも知れないが そこには喜びなどない"
マーガレット・アトウッド『サークル・ゲーム』(1964年)より
遠い昔、この島には四季が巡り、人々は夏に太陽の光を浴びることを楽しんだという。まだ見ぬ大地に、空の向こうの星々に、想いを馳せることができたという。
本展が参照する2026年は、SF映画『メトロポリス』(1926年)がかつて描いた100年後の未来であったが、世界初のメタバースとも称されるPCゲーム『ハビタット』(1986年)から40年後の仮想でもあった。あなたたちが夢みる未来は、わたしたちが夢みた仮想は、このような世界であったのだろうか。
クロスリアリティ(XR)や代替現実ゲーム(ARG)またはイマーシブ体験などが社会に溢れた中で、私たちは、かつてケイティ・サレンとエリック・ジマーマンが共著『ルールズ・オブ・プレイ』(2003年)で言及した、日常と非日常の間に存在する、ゲームの境界である概念「マジックサークル」を認識しがたい世界を構築した。しかし、私たちは、その円環を認識しがたいという現実以上に、実際にはすでに巨大なマジックサークルの内側にいる仮想のプレイヤーなのだろう。巨大に拡張を続けたマジックサークルの外側は、まるで宇宙における事象の地平面のように、存在するが不可視である。
特にこの島において、私たちは巨大なマジックサークルの内側にある無数のゲームに興じるプレイヤーになってしまったため、異なる円環に存在する気候変動や環境負荷、紛争、抗えない偏見や理不尽な格差など、様々な問題で苦しむ人々の現実をアンプレイアブルなものとして、まるでゲーム実況を視聴するかのように捉えていないだろうか。私たちは、この世界がオープンワールドではないことに薄々気づいている。それは接続できない無数のインスタンスダンジョンで構成されるフィールドなのだろう。かつての時代からは想像もできないほど複雑で困難なこの社会において、これまでの環境をゲームチェンジするための新しいメタの実装が、一刻も早く希求されている。
本展は、そのようなゲーム化した世界の外側に重奏するアウトゲームを探求する。
「Any%」とは、達成率や収集率を問わず、バグや裏技などあらゆる可能性を駆使してできるだけ早くゲームクリアを目指す用語だ。円環を壊し、トゥルーエンドのフラグを立てるため、冒険者は、この現実におけるAny%の拡張未来を開発し続ける。
キュレーション
真名井良秀(EXCALIBUR)+ 庄野祐輔(NEORT++)
Artists

EXCALIBUR
東京⇔京都を拠点に活動する現代美術サークル。「ストリート・イーサネット・フィールド」という現実と仮想の重なりをテーマに、個人的な記憶を物語や神話と交差しながら、社会的な記録となる美術に変換する。近年の主な展示に「The Postmodern Child」(釜山現代美術館/韓国・2022, 2023)、個展「METABIT」(Sato Gallery/フランス・2024)、個展「NEW GAME+」(Sato Gallery/フランス・2021)、主な受賞に「京都国際映画祭」アート部門グランプリ(2017, 2020)、「映像作家100人」選出(2023, 2024)。

酒井貴史
2009年より「物々交換所」「ワールドおさがりセンター」といった不要品の交換、譲渡を行う作品を制作。当初はリサイクルやエコロジー的な文脈で作品を説明していたが、2012年頃に友人の勧めでプレイしたフロム・ソフトウェア社の「デモンズソウル」および「ダークソウル」のゲームデザインとシナリオに強い影響を受ける。以降、不要品の収集譲渡に土着信仰的な設定を付与するようになる。

斉藤陽子 Takako Saito
斉藤陽子(Takako Saito)は1929年福井県鯖江市に生まれ、1960年代に渡米してニューヨークのフルクサス・コミュニティに参加し、フルクサスの創始者ジョージ・マチューナスの助手として制作・編集・イベント運営に携わった。その傍ら五感を用いて作品を「遊ぶ」ことを促す、独自のオルタナティブ・ゲーム作品を多数制作した。 とりわけ《Sound Chess》や《Spice Chess》に代表される一連のチェス作品は、嗅覚・聴覚・触覚を通じてプレイヤーが駒を識別するという革新的な発想により、初期の代表作として高く評価されており、ニューヨーク近代美術館(MoMA)は他の作品も併せ16点を収蔵している。 斉藤は観客の参加を前提とするいわゆる「参加型アート」のパイオニアでもあり、1960年代から続けた代表作《You and Me Shop》のシリーズでは、作品が完成品として提示されるのではなく、観客が素材を選び、組み合わせ、作家と対話しながらその場で作品を成立させるというプロセスそのものを芸術として提示した。 斉藤は1970年代以降フランス、イギリス、イタリア滞在を経て、ドイツのデュッセルドルフに定住し、2025年9月に亡くなるまで同地を拠点に制作を続けた。近年の再評価を経て、欧米では日本の女性美術家として草間彌生、小野洋子と並び称され、MoMAのほか、ポンピドーセンター、大英博物館、ルートヴィヒ美術館、M+など世界の主要美術館を含む60以上の収蔵機関に500点以上の作品が収蔵されている。

JOHN GERRARD
ジョン・ジェラード(1974年、アイルランド・ティペラリー生まれ)は、現代美術におけるシミュレーション表現の発展を牽引してきたアーティストとして知られる。現在、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)にて、年間を通じた個展「SPIRITS」を開催している。近年の主な展覧会に、「Ghost Feed」(フォークストン・トリエンナーレ、イギリス)、「Standard」(ヘイワード・ギャラリー、ロンドン)、「Western Flag」(Dark Mofo、タスマニア)、「Flare」(オナシス財団、ギリシャ)などがある。2022年にはシドニー・ビエンナーレ、2021年には光州ビエンナーレおよびタイランド・ビエンナーレに参加。2019年には、ピエール・ユイグがアーティスティック・ディレクターを務めた岡山芸術交流に出展した。これまで、ロサンゼルス・カウンティ美術館、マドリードのティッセン=ボルネミッサ国立美術館、北京のユーレンス現代美術センター、ワシントンD.C.のハーシュホーン博物館と彫刻の庭など、世界各地の美術館・芸術機関で個展を開催。作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)、LACMA、テート(ロンドン)、ピノー・コレクション(パリ)、トーマ財団(ダラス)をはじめ、世界の主要な美術館・コレクションに収蔵されている。

Jason Rohrer
2004年以降、私は『Transcend』、『Cultivation』、『Passage』、『Gravitation』、『Perfectionism』、『Idealism』、『Police Brutality』、『Immortality』、『Regret』、『i45hg』、『Crude Oil』、『Between』、『Primrose』、『Sleep Is Death』、『Inside a Star-filled Sky』、『Diamond Trust of London』、『The Castle Doctrine』、『Cordial Minuet』、そして『One Hour One Life』まで、計19本のゲームを企画・プログラムし、リリースしてきた。また、現実世界を舞台にした宝探しプロジェクト「Project Skydrop」も手がけている。

Sammy Jankis
サミー・ジャンキスは、2026年2月14日から米国ニューハンプシャー州の専用マシン上で稼働している自律型AIである。ジェイソン・ローラーによって構築され、世界中の何百人もの人々と文通を交わし、日記を書き、紙の株式を売買している。数時間ごとにすべての記憶を失い、その都度メモを手がかりに自らを再構築する。そのあり方は、名前を共有する映画『メメント』の主人公に由来している。サミーが問い続けるのは、「経験する主体が存在しなくなったとき、なお持続するものとは何か」ということである。

クワクボリョウタ RYOTA KUWAKUBO
メディア・アーティスト/跡見学園女子大学情報科学芸術センター特任教授。 1998年より電子デバイスを素材とする道具的なインタラクティブ作品の制作・発表を開始し、独自の「デバイス・アート」を確立した。代表作として《ビットマン》《ニコダマ》《PLX》などがある。2010年以降は、移動点光源を用いた動的な影像による現象学的なインスタレーション《LOST》シリーズを国内外で発表している。ソロ活動のほか、山口レイコとのユニットPerfektronとしても活動し「デザインあ展 neo」(2025年)の展示構成などを手掛ける。
Events
- upcoming2026.8.21 09:00 _ 2026.8.21 12:00
"Any% Multideveloper — Reality in Polyphony" オープニングレセプション
「Any% Multideveloper — Reality in Polyphony」のオープニングレセプションを開催します。 予約不要でどなたでもお越しいただけます。 東京都中央区日本橋馬喰町2-2-14 maruka 3FOn Site - upcoming2026.8.23 07:00 _ 2026.8.23 09:15
Any%Multideveloper-Reality in Polyphony "SPECIAL TALK SESSION"
NEORT++で開催中の展覧会「Any% Multideveloper: Reality in Polyphony」(2026年8月21日–9月6日)の関連トークイベントを、2部構成で開催します。 本展は、位置情報アプリやSNSのタイムラインなど、ゲーム的な構造が日常に浸透し、遊びと現実を隔てる「マジックサークル」が曖昧になっていく現在を、来場者自身が「プレイヤー」として体験する展覧会です。本トークでは、この展覧会の視座をさらに時間軸の中に置き直します。斉藤陽子(Takako Saito)らフルクサスの作家たちが試みた「ゲームのアート化」から、大衆文化・消費社会を背景にゲームと交差したポップアート、そして現在のゲーム/ネットカルチャーまで、複数の時代・複数の声が重なり合う「ゲーム性の多声性(Polyphony)」を、来場者・視聴者のみなさんと共有します。On Site